「ごめん、はしゃいじゃった……」

 おずおずと沢里に寄ると、ぽんと頭に手を乗せられて顔を覗き込まれる。

「緊張ほぐれたか?」

「え?」

「家に入った時、ガチガチだったろ」

「そりゃあね。規格外のお家だとは思ってなかったし……」

「まあ俺もリンカの家行く時は緊張したからお互い様だな」

「え? そうだったっけ」

 それは沢里の声を録音した日のことだろうか。

 思い返しても緊張していたとは思えない、自然体だったはずだ。第一私の家はごくごく平凡で、緊張する要素はなにもない。

 首を傾げていると沢里は悪戯っぽく笑い、「まあ分かんないならいいよ」なんて言ってみせるので、そうだったのかもしれないということにしておく。