「すごい! ねえここ、スタジオだよね?」
「親父の専用スタジオなんだ。今日リンカが来るって言ったら喜んで開けてくれてさ」
「家にスタジオがあるとか……! 羨ましいっ!」
沢里のお父さんが何者かはまだ分かっていないが、このスタジオの規模を考えるととんでもない人なのかもしれない。
沢里に促されスタジオの中を見せてもらう。自分の部屋と比べると当たり前だが声がよく通り、音の反響も違う。
空間全てが音楽を生み出すためにある。私はドキドキする胸を押さえてマイクの前に立ち、この場にいる幸せを噛み締めた。
「ここにいるだけでワクワクする」
ふと仕切りの向こうで沢里が生温かい目でこちらを見ていることに気付き、はしゃぎ過ぎていたことが恥ずかしくなる。
