「ゆ、ユニット……?」

 くらくらする頭を押さえながら立ち上がり、目の前の転校生――沢里初春を改めて眺める。

 首が痛い。私は平凡な身長のはずだ。小柄ではない。

 なのに彼と目を合わせようとすると見上げなければいけない。

 背が高い、そして体格もいい。

 それでも威圧感があまりないのは爽やかな短髪と笑顔のせいかもしれない。

 目尻を下げて笑うので田舎のおばあちゃんの家で飼われているゴールデンレトリバーに見えてしまう。

 見えないはずの尻尾がぱたぱたと左右に揺れている気がする。

 へにゃりと音が出そうな顔を、私は慌てて手のひらで押しやり遠ざけた。

「ユニットなんて組まないしそもそも私は【linK】じゃないから!」

「頼むよ! せめて一回だけでも。あっバックコーラスでいいから!」

「いーやー!」

 両手をつっぱってもビクともしない。

 ゾンビみたいに迫ってくる巨躯に私は軽く、いやかなり混乱していた。

 ゴールデンレトリバーのゾンビに襲われるなんて誰が経験したことある?

 あまりの不運さにじんわりと涙がにじむ。

 最悪だ。【linK】の正体もバレて、おまけにユニットなんて訳の分からないことを迫られるなんて。