「釣り合おうと必死なのは俺の方だよ。知ってるか、最初にピアノ弾けって言われた時、めちゃくちゃ手震えてた。上手くできなくてリンカに失望されたらどうしようって。だからリンカが、自分が釣り合わないから離れようとするのはおかしい。俺のことがもういらなくなったら、リンカがちゃんと言ってくれ。俺が釣り合ってないって言ってくれよ。そうしたらまだ諦めが――」

 そこまで言って沢里は一度息を吸った。

「つかない! 全っ然つかない! 諦められない。もっと頑張るから、コーラス続けさせてくれ! 【linK】の世界に俺も入れてくれよ!」

 沢里の真剣さが痛いほど伝わってくる。

 【linK】を特別に思ってくれていること、もっと歌いたいと思ってくれていること。

 その覚悟がスマホ越しにひしひしと感じられた。

 私にその思いに応える覚悟があるか。こんなにも考えてくれている沢里と、体面を気にせずやっていく自信を持てるか。

「沢里はなにも悪くない」

 沢里の気持ちに応えたい。理由はそれだけでいい。

 例え誰かに文句を言われても、沢里がいてくれるならいい。

「私に覚悟が足りてなかった。私がぱっとしないから人気者の沢里とつるむのはおかしいって、心のどこかでずっと思ってた。釣り合う釣り合わない関係なく、曲のためには沢里の力が必要なのに。アンチと真っ向勝負する勇気が私にはなかった……。沢里がこんなにも望んでくれているのに。私は――」

「私ももう、外野になに言われても沢里のこと諦めない。だからお願い、私のために歌って」

 沢里を泣かせてしまった重罪は、歌で償う。

 私にはそれしかできないし、なによりきっと沢里がそれを望んでくれると信じている。