「リンカ?」

「あーごめん、思わず電話しちゃった。今って平気?」

「思わずってなんだよ。俺も丁度連絡しようとしてた。今日は本当にご」

「だーー! だめだめだめ!!」

 ごめんと続くだろう沢里の言葉を遮りたくて大声を上げてしまった。

 沢里の困惑が見えずとも伝わってくる。

 私はこれ以上沢里に謝らせないよう必死にスマホにかじりつく。

「謝るのは私の方! 酷いこと言って本当にごめん! 心にもないこと、軽率に言った。沢里を傷つけるってよく考えたらわかることだったのに……ごめんなさい。許してほしい」

 言うべきことを一息で言い、私は沢里の反応を待つ。しばしの沈黙の後、沢里の弱々しい声が聞こえてきた。

「心にもないことって?」

「え、だから……動画に出さないってこと」

「じゃあ俺またリンカのコーラスできる?」

「うん! 沢里さえよければまたお願いしたいよ!」

 そこまで言うと沢里は長いため息を吐いた。そして緊張が解けたような、安心したような声で「よかった」と呟く。