君の隣で歌いたい。



「謝らなきゃ」

「そうだね。ま、凛夏の気持ちも分かるよ。沢里クンはちょっと極端すぎるっていうか」

「極端?」

「一度懐に入れたら甘いというか行き過ぎてるというか」

「土井ちゃんから見ても行き過ぎてると思う?」

 土井ちゃんは頷き「そういうあんたはどうなのよ」と言う。

 首を傾げると怪訝そうな顔でこちらを見た。

「沢里クンのことどう思ってるの?」

 カラン、とアイスティーのグラスの中で氷が音を立てた。

 一言では言い表せない感情が喉に引っかかり、私は口を開きかけてまた閉じる。

 誰に気を使うこともない。今ここには私と土井ちゃんしかいないのだから。

 私は意を決して、土井ちゃんに向き直る。

「信じられないと思うけど、沢里には不思議な力があるの。人の背中を押したり、涙を止めたりする不思議な力。私はそれに救われてる」

 常日頃思っていることだ。

 沢里は私に歌を続けさせるために神様が出会わせてくれた存在だと。

 一体何度救われたか分からない。

 そう考えると、今回沢里を傷つけて泣かせてしまったことが心に重くのしかかる。

 私は最低なことをした。

 自己嫌悪に陥っていると、向かいの土井ちゃんは頭を抱えていた。

 きっと私は土井ちゃんの手にも負えないほどの大馬鹿者なのだろう。

 もう春が終わる。今日食べたパンケーキはなんの味もしなかった。