君の隣で歌いたい。



「うわわ!?」

「よ、リンカ」

「沢里?」

「これから時間ある?」

 ゴミ袋を私の手から奪い取った沢里に上から覗き込まれる。

 昼休みの出来事はまるで気にしていないといった様子だ。

 私は戸惑いを覚えつつゴミ袋を取り返そうとするが、沢里の頭の上まで持ち上げられてしまったそれに手が届くわけもなく、仕方なしに返事を待つ沢里に首を振る。

「今日は土井ちゃんとパンケーキ食べに行くの」

「……そっか」

「あの、沢里。先輩たちにキレたって本当なの?」

 私の問いかけに沢里の目が丸くなる。

 先輩三人組に絡まれてから沢里は私への過剰なミーハー的態度を改めていたはずだ。

 そのおかげでもうなにも言われなくなったのだと勝手に思っていた。

 しかし実際はそうではなく、沢里が直接先輩たちを黙らせていたのだとしたら。

「お願い。私のことかばわないでよ」

 それは心からの懇願だった。

 沢里にかばわれなくてもアンチに負けるつもりはない。

 沢里の立場が悪くなるのが嫌だ。

 沢里はなにを考えているのか分からない目をこちらに向けて――そしてそのまますたすたと歩きだしてしまった。