君の隣で歌いたい。



「調子のんな馬鹿!!」

 ドラマでしか聞かないような捨て台詞にぽかんとする私を、土井ちゃんが無理やり立たせる。

 大丈夫かしきりに問う土井ちゃんにこくりとひとつ頷くと、土井ちゃんは戸惑いの表情で状況を教えてくれた。

「凛夏が美奈と話してるのヤバいと思いながら影から覗いてたんだけど……凛夏が掴みかかられたときに止めに入ろうとしたの。そしたらそれよりも早く沢里クンが飛び出して行って……」

 その簡潔な説明に再度頷き、おそるおそる沢里を見る。

 沢里は私に背を向けたまま美奈の背中をしばらく眺めた後、くるりと振り返り奇妙な笑顔を浮かべた。

「リンカ、大丈夫だったか。いやーなんだかまた迷惑かけたみたいだな。ごめん」

「沢里のせいじゃ……」

「とりあえず教室戻ろうな。はい皆さん解散解散―!」

 沢里の鶴の一声で野次馬が散っていく。その内の何人かに「どんまい」と声をかけられ途端に恥ずかしさが襲ってきた。

 沢里は私の肩を一回叩いて、購買の方に歩いて行ってしまった。