透流さんを殴り飛ばした私が言えることではないのだが。
されるがままに目を回していると、ピロティにいた生徒のざわめく声が聞こえてきた。
開けた場所で女子二人が言い争っているのだから目立つのは当然だ。
「り、凛夏!」
どこかから土井ちゃんの声が聞こえたが、目が回っていてそれどころではない。
するとぶれる視界の端で誰かが美奈の腕を掴んで止めてくれた。
私は強い力から解放され、ぺちゃりと床にへたり込む。きっと土井ちゃんが助けてくれたのだ。
「あ、ありがと土井ちゃ」
頭を押さえながら二人を見上げる。しかし見えたのは土井ちゃんの姿ではなく、私と美奈の間に立ち塞がる大きな背中だった。
「いい加減にしろよ」
「――!! さ、沢里くん」
状況を理解する前に土井ちゃんに肩を支えられる。沢里が美奈の腕を掴んでそこに立っていた。
美奈の顔はどんどん青ざめていき、とうとう沢里の腕を振り払って走り去ってしまった。
