「あの、沢里?」

「俺はリンカと死ぬほど一緒に歌いたいのに、歌えなくしたそいつらが許せない」

「え?」

「どいつもこいつも俺の邪魔をする」

 そう言って苦々しい表情を浮かべた沢里を、私は思わず穴が開くほど見つめてしまった。想像していた反応と違う。なにかもっと、過去の私について言及されると思った。

 なぜ大切な時期に部長をふったのか、どうして肝心な本番で失敗したのか。私の胸に深々と刺さっている後悔の棘に、沢里はちっとも触れない。疑問に思わないのだろうか。私は今でも私の行動が正しかったと思えないのに。

「どうしてそう思うの?」

「リンカはなにも悪くない。じゃあリンカは、部の雰囲気を壊さないために好きでもないやつと付き合っていればよかったと思うか? 俺は思わない。絶対に思わない。断言する、リンカは間違ってない!」

 それは遅れてきた救いだった。

 あの時誰も言ってくれなかった言葉を、今言ってくれる人がいる。

 これ以上情けない顔を見られないように俯くと、溶けたアイスの水滴とともに涙がアスファルトを濡らした。

 あの頃一人で家に帰りながら何度こうやって泣いただろう。もう一生分泣いたつもりでいたのに、沢里に出会ってから私はより泣くようになってしまった。