♢♢♢
「その頃は家でもごたごたしてて、周りに相談できる人もいなかった。友達もほとんど合唱部の子だったから、結局卒業まで私を避けていたし。……正直、どうすればよかったのか今でも分からないの。頑張って頑張って、上手くいかなかった。それだけじゃなくて私は疎まれる存在になってしまった。息もれは多分、そのことを思い出して体がすくんでしまっているから起こるんだと思う。私は人と歌うのが……怖い。昔の仲間にまだ歌を続けてるって知られるのも怖いの」
手の中のアイスが溶け切ってしまうまで、沢里は黙って私の話に耳を傾けていた。
つまらない話だと思われただろうか。ちらりと沢里の方に視線を向けると、沢里はどこも見ていないような目をして食べ終わったアイスの容器を握りしめていた。
その表情に背筋が冷える。爪を割ってしまった時に見た、感情の抜け落ちた顔だ。
「その頃は家でもごたごたしてて、周りに相談できる人もいなかった。友達もほとんど合唱部の子だったから、結局卒業まで私を避けていたし。……正直、どうすればよかったのか今でも分からないの。頑張って頑張って、上手くいかなかった。それだけじゃなくて私は疎まれる存在になってしまった。息もれは多分、そのことを思い出して体がすくんでしまっているから起こるんだと思う。私は人と歌うのが……怖い。昔の仲間にまだ歌を続けてるって知られるのも怖いの」
手の中のアイスが溶け切ってしまうまで、沢里は黙って私の話に耳を傾けていた。
つまらない話だと思われただろうか。ちらりと沢里の方に視線を向けると、沢里はどこも見ていないような目をして食べ終わったアイスの容器を握りしめていた。
その表情に背筋が冷える。爪を割ってしまった時に見た、感情の抜け落ちた顔だ。
