君の隣で歌いたい。



『俺と付き合ってほしい』

 部長の言葉に私は耳を疑った。皆で全国に向けてラストスパートをかけているという時に、告白をしてくる神経が分からなかった。

 今思えば全国のプレッシャーに押し潰されそうになっていて、心の支えがほしかったのかもしれない。

 けれど当時の私は真剣に合唱に取り組む中に恋愛ごとを持ち込むのは裏切りだとすら思った。

『ごめん……私は歌に集中したいから』

 だからあなたも目の前の大会に集中してほしい。そういう意味を込めて断った。

 しかし、次の練習から部長は姿を現さなくなった。顧問に退部届を提出し、学校にも来なくなってしまった。