君の隣で歌いたい。



「つらかったな」

 不意に投げかけられた答えに、ぼとりとアイスを取り落す。

 沢里がそれを拾うのを、私は動けずにただ見ていた。

「思うように歌えないって、すごくつらいから。だからリンカは、つらいの我慢してたんだと思うとなんか……」

 沢里はもごもごとそう言うと、急に片手で目を覆い隠して「なにも言えねえ!!」と叫んだ。

 テレビで見た覚えのあるそのパフォーマンスに私はがくりと首を下げる。

「あんたねえ」

「そして俺は勝手に反省中デス」

「なんで?」

「リンカと一緒に歌いたいって俺がしつこく言うからリンカはつらいのに歌ってくれたんだろ? それに比べて俺は、なんでこうなんだって。優しいよな、リンカ。……ぼくももっと優しい人間になりたいと思いました、まる」

「なにそれ」

「せめて俺の前では力抜けよ。俺に優しくしなくていいし、リンカはなーんも気にしなくていい。素のままのリンカでいてほしいんだ。嫌なことは嫌って言っていいからさ」

「沢里……」