そんな中、ミナはやっぱり少しだけよそよそしかった。でも、翔は全く気にせず、三人の運転手役に徹した。
 沙羅に関して言えば、切ないほどにテンションが高い。
 昨夜はほとんど寝ていないはずで、沙羅が何度も寝返りを打っていることを翔は気付いていた。沙羅の告白は翔の胸に痛いほど響いたけれど、でも、今はその想いを受け取める時じゃない。
 翔の仕事に対するプロフェッショナルな軸は、こういう状況に陥ってもぶれる事はないけれど、でも、胸の奥の方が凄まじく痛かった。
 もし、仕事が関わっていなければ、すぐにでも抱き寄せてキスをしたい。そんな事を考える自体、翔は自分の変化に驚いている。でも、沙羅の護衛が怠る事は絶対にあり得ない。それは翔の信念であって、完璧な仕事をするという翔のプライドだった。
 ミナの計画した観光スポットを一通り巡って、今回の観光旅行は終わりとなる。翔は後部座席でずっと仲良くお喋りしている三人を見れなくなるのは寂しかった。それくらい、三人とも本当にいい子で大好きだった。

「沙羅、今度はアメリカで会おう。来年の三月には帰る予定だから」

 ミナのその言葉にウィルも一緒に頷く。
 その春にまた再会する事を約束して、三人は別れた。楽しかった日本での日々を胸にしまって。