沙羅は窓際に移動してカーテンを開けた。美しい夜景は見れないけれど、大きな月が光輝いている。沙羅は窓を少しだけ開けてみた。ホテルの前に広がる海を感じたかった。寄せては返す波の音がかすかに聞こえる。
「別に怒ってなんかないよ…」
背後で翔の声がする。翔はベッドから起き上がってこちらを見ていた。
「ミナはただ心配しているだけなの…
もし私が本当に翔の事が大好きになったとしても、それは翔のせいじゃない。
翔は私を守るために、恋人のふりをしてくれている。それは翔の仕事で、私のパパがそうお願いした事。
だから、気にしないで…
これは私の問題なの。翔には関係ない」
「もし沙羅が本気で俺の事を好きになったら、その時はどうするの?」
ほら、また…
翔はこういう時、本当に意地悪になる。そんな事を聞いてどうするの?って、沙羅の心は叫んでいる。でも、口には出せない。だって、翔に嫌われたくないから。



