美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 沙羅は翔に連れられて隣の部屋に戻った。翔は何も言わず、自分のベッドに横になる。

「シャワーを浴びたり好きに動いていいよ。俺はもう寝るから気にしないで」

 翔はそう言いながらワイヤレスイヤホンをつけ、目を閉じた。
 沙羅はそんな翔のそっけない態度に、心が張り裂けそうになる。沙羅の翔への想いは完全に本物の恋心で、それは偽りの恋愛ごっこではない。でも、翔は?

「翔… ごめんね…
 ミナが変な事聞いて気分が悪くなったよね?
 本当にごめん…」

 沙羅は翔の演じている恋人キャラに振り回されているだけだと自分に言い聞かせる。今、目の前にいる翔は偽物の恋人。一喜一憂する必要なんてない。でも、そんな翔にさえ心は惹かれている。まだ、ただ抱きしめられただけなのに。
 その場に立ち尽くす沙羅を、翔はジッと見ていた。その視線が優しいのか冷たいのかそれすらも分からない。