翔はとりあえずミナとウィルに顔を見せた。ウィルは単純に喜んでいるけれど、ミナは臨戦態勢の目をして翔を睨んでいる。
「翔、一つ聞いていい?」
ミナの問いかけに翔は困ったように頷いた。
「酔ってるのなら、明日にしてほしい」
「酔ってないよ」
ミナはそう言って、沙羅の隣に座った。反対側の隣には翔が立っている。
「翔は恋人はいないの?」
翔は面倒くさそうにため息をついた。沙羅はそんな翔を見て、心が苦しくなる。
「いないよ。好きな人はいるけどね」
翔はそう答えると、すぐに沙羅の手を取った。
「明日も早く出発するなら、もう、みんな寝た方がいい。
ミナ、明日のスケジュールは9時出発で変わりない?」
ミナはやり切れない顔をして沙羅を見つめる。沙羅が翔によって傷つけられる事を恐れているみたいに。
「変更はない」
ミナはそう言うと、沙羅にハグをした。翔に聞こえないように“ちゃんと自分を守ってね”と囁きながら。



