というのが昨夜の話で、翔は特別動かずに、この車がやってきたというわけだった。
「でも、よかったでしょ? 沙羅の荷物がこんなに大きいなんて思わなかったし、それに、この車なら他の二人が同じようなサイズのスーツケースを持って来ても大丈夫」
沙羅はすごく喜んでいる。広々とした後部座席見て、荷物を積んでいる翔を後ろから抱きしめた。
「翔、本当にありがとう…」
ふと、翔の頭に昨夜の仁の言葉が浮かんできた。
あ~キスしたい~
まさにそれだ…
でも、翔は「どういたしまして」と微笑んで、腰に回す沙羅の手を優しく握るだけに留めた。この段階でのキスは危険すぎる。
そんな風に必死に自制する時点で、いつか近々我慢できなくなってしまうのだろう。きっと、大爆発か大暴発をするに違いない。翔は小さく首を横に振った。そんな日が来るのが楽しみであり、その反面、たまらなく怖かった。
「よし、じゃ、沙羅のお友達を迎えに行こう」



