「ね、マジで、七海に譲りたいんだけど」
七海はさっき唐澤からもらったファイルを勝手に見ていた。
「めっちゃ可愛い子だね」
「それくらいのレベルの子はたくさんいるよ」
翔は面倒くさそうにそう言った。
「あ、でも、俺には無理だわ。こんな可愛い子だったら感情移入しちゃいそう」
翔は鼻で笑った。
「七海が恋愛体質なこと忘れてたわ。
ていうか、それ直さないと、現場の仕事はほとんど無理じゃない?」
「男相手の仕事はかなりこなしてる。あと、データ上の犯罪とかね」
色黒で目が大きくて色々なタイプの人間になり切れる七海は、ある意味、便利な男だ。五か国語を操る超できる男なのに、喋り始めると赤ちゃんみたいに可愛らしい。ユリヤに言わせると、そのギャップがたまらないらしい。
翔はそんな七海を観察しながら、楽しそうに笑った。



