「サイクリングで楽しんだじゃん。
帰りは大人しく車で帰った方がいい。ほら、初日だしさ」
沙羅は瞬きもせずに翔を見つめている。その瞳に、翔を求めているみたいな切なさを感じ取ってしまった。マジか…?
「翔が歩くなら私も歩く。一緒に散歩がしたい」
翔はわざとらしく天井を見上げた。俺と一緒がいい? まだ初日なのに??
そんな風に揉めている二人の元にまたスタッフが伝言を持ってきた。駐車場に車を長時間停めれないため、急いで来てほしいとの事。
翔は沙羅に意地悪な視線を送りながら、そのスタッフにすぐ行くと伝言を頼んだ。
「ほら、行くよ。俺も車で帰るから」
沙羅はホッとしたように立ち上がった。その表情に翔はまた笑ってしまう。
沙羅は散歩がしたいわけじゃなくて、翔と一緒に居たかった、という事。そんなストレートな愛情表現に翔の心はかなりざわついている。



