「その動画って、見せてはもらえないよね?」
「見せたくない!」
翔は面倒くさそうに頭のてっぺんを掻いた。そして、今度は真剣な眼差しで沙羅を見つめる。
「とにかく、あいつに惚れる事は絶対に許さない。
それだけはしっかり覚えておいて」
そんな二人に店員が伝言を預かってきた。店の裏側にある駐車場にお迎えの車が着いたとの事。翔はそうだったと、ため息をついた。
「沙羅に言うのを忘れてた。
実は、自転車でこの店に向かう事を支配人に反対されてたんだ。
沙羅はあのホテルのオーナーのご令嬢で、そんな庶民的な事をする身分じゃないって」
翔はムカついたように微笑んだ。
「でも、俺が危険な目には遭わさないからって説得してサイクリングができたんだけど…
帰りはお迎えに来るのが条件だった。
自転車はホテルのスタッフが乗って帰るから、沙羅は車で帰って」
「翔は?」



