美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 普段なら、大切なクライアントにこんな話をベラベラ喋らない。護衛される方に余計な心配をかけない事が鉄則だから。
 でも、今回の翔は今までの翔とは違う。明らかにクールじゃない。でも、それならそれで、やり方を変えるしかなかった。
 沙羅を危険から守る事は大前提で、その他に沙羅の恋心も守らなければならない。龍也に惚れるなんて絶対にあり得ない。それは、翔個人としての完全なる嫉妬だった。気付いているか気付いていないかは別として。

「多分、大丈夫だと思うけど…
 でも、会ってみなきゃ分からない。
 それに、私は龍也君が悪い人とは思えないの。
 翔やパパ達がどんな情報を共有してるかは知らないけど、私は本人と連絡を取り合ってる。
 この間、送ってきた動画に映る龍也君は、子供の頃と同じ優しい目をしてるし、笑った顔も昔のまま。
 だから、会おうって思った。
 私だって、そんな馬鹿じゃない。ちゃんと自分で判断できる」

 翔は、全然判断できてないよ…とは、言わない。
 そういう風に全てを素直に受け止める沙羅の性格を否定したくないと思った。でも、いい気分はしない。この件に関しては、全く寛大になれない。
 翔はそんな自分が可笑しくて鼻で笑った。