夕方の空がとても美しかった風景も、もうあっという間に夜の景色に変わった。テラス席から見えるレインボーブリッジは赤とオレンジ色に色づき、沙羅は東京の夜景が本当に好きだと実感している。
 沙羅が食事を済ませデザートに入ろうとした時に、翔がこう切り出してきた。

「それで、その龍也の事を教えて」

 沙羅は飲みかけたアイスコーヒーを吹き出しそうになった。スケジュールの事じゃなくて、いきなり龍也君の事? 沙羅は動揺を必死に隠しながら、翔へ微笑んで見せる。

「た、龍也君って、私の幼なじみの?」

「幼なじみなの? そんな深い関係だとは思えないけど」

 翔もストローでアイスコーヒーを飲みながら、上目遣いでそんな意地悪な事を聞いてくる。でも、視線は沙羅の背後の動きにすばやくリンクする。常に周りに目を光らせている翔なのに、人懐っこい可愛らしい表情はいつものまま。