翔の後ろからパソコンを覗き込んでいる沙羅は、思いのほか翔に近づきすぎていた。翔が後ろを振り返ると、まるでキスをするカップルのように急接近する。
 でも、そんなシチュエーションを翔は楽しんでいた。沙羅を見つめる目を少しだけ細めて微笑みながら。

「俺は沙羅を監禁する気なんて全然ないから。
 自由に好きに動き回っていいよ。
 その代わり、俺も連れて行ってほしいだけ」

 沙羅は翔の表情に、置いてきぼりが嫌いな甘えん坊の弟のような、そんな姿が見える。不思議と母性本能が芽生えてしまう。こちらが守られている身なのに。
 沙羅はテラス席がある雰囲気のいい店を選んだ。翔はネット予約ではなくわざわざ電話をして席の予約を入れる。そして、たまたまキャンセルが出たテラス席をゲットする事ができた。

「急がなきゃ、あと、20分しかない」