翔はそう言った後、沙羅の表情を見ていた。沙羅は困ったように窓の外の景色を見ている。
「沙羅が良ければの話だから…」
翔はそう言いながら、もう一口紅茶を堪能する。鼻で香りを楽しんで。でも、視線は沙羅から外さない。色々な意味で、沙羅は興味深かった。
「翔…
ここのゲストルームに泊まっていいよ。
ううん、泊ってほしい。壁を隔てて廊下の向こうの部屋にいると思うと、すごく寂しい。
同じ空間で翔を近くで感じてる方が、すごく安心するって思った。
これが私の素直で正直な気持ち。
だから、気兼ねなく、ここの全ての空間を好きに使っていいからね」
沙羅の頬はピンク色に染まっていた。色白の肌のせいでその変化はすぐに分かる。明らかに翔の心がざわつき始める。いや、もしやときめいている?
こんな可愛い表情をする女性は、翔の人生の中で初めてかもしれない。
そんな気持ちはとりあえず脇に置いて、翔は沙羅に握手を求めた。沙羅はとびっきりの笑顔で翔の右手を両手で包み込む。
「ありがとう、沙羅」



