美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



「毎回、こんな感じで?」

 翔はテーブルの上に並ぶ食器を見て、目を大きくしながらそう聞いた。

「家族でくつろぐ時や、お客様が来た時はこういう感じ。
でも、一人の時はティパックの紅茶をマグカップで飲むのが普通」

 翔は頭の中で沙羅の日常の風景を思い描いた。そして、そんな翔の様子を窺っている沙羅を見つめる。

「じゃ、俺はもてなしてもらってるんだ」

「もちろん」

 沙羅は翔の正面に座り、小さく深呼吸をする。

「パパからの依頼を受けて、私のボディガードになってくれて本当に感謝しています。
 でも、私自身、こういう本格的な警護を付ける事が初めてで、どういうふうにしていいか全然分からない。
 分からないけど…
 翔の言う通りに、自分自身もアンテナを張って、できるだけ翔に迷惑をかけないように頑張るので、この先一週間、こんな私をどうかよろしくお願いします」

 翔の心がちくりと痛む。この可愛らしい痛みの原因はまだ何も分からない。でも、翔には珍しく気持ちが穏やかだった。