美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 翔はドアの前でそう沙羅に問いただす。
 この最上階のフロアは住居区間とテナント区間はセパレートになってはいるものの、プロの犯罪者は色々な人になりすまして簡単にここへ侵入できる。
 このホテルだけじゃない。翔の希望は、沙羅にいつも危機感を抱いていてほしかった。

「俺の感じじゃ、一秒もモニターを観てない。
 パッとみて、あ、翔だ!はい、開けまーす、みたいな。でしょ?」

 沙羅はクスッと笑った。その表情は完全に翔の事を信用している。今までの笑顔とは全然違う。

「まだ、会って間もないのに、どうして、私のことが分かるの?
 はい、開けまーすって、確かに、心の中でそう言ってた」

 翔は困ったように微笑む沙羅を、何だか抱きめたくなった。そして、そういう瞳で見てしまう自分を制御できない。

「でしょ?
 最低五秒は見てほしい。
 俺の顔を、じゃないよ。俺以外の周りの状況を」