「このエレベーターはデラックススウィートルームにお泊りのお客様専用となっていますが、一般客のお客様が使用するエレベーターでも最上階に行く事ができます」
翔はセキュリティ面であまりよろしくないなと思った。宿泊客にとっては便利な反面、誰でも最上階に行く事ができる。コンシェルジュのチェック機能に期待するしかなかった。
支配人は沙羅に部屋のルームキーを渡した。その部屋のドアの隣にもう一つドアがある。支配人は翔に目配せをして、さりげなく別のキーを渡す。
「お荷物は今から運んでまいりますので、少々、お待ちください」
支配人はそう言うと、その部屋から出て行った。沙羅はそのデラックススウィートルームの豪華さに驚く事も感動する事もなく、大きな革張りのソファに腰かけてため息をついている。
逆に、翔は子供のように、大きな窓から見えるオーシャンビューに感動して少しだけはしゃいでいた。
「この角度からの東京の景色も最高だね。
俺的には超高層ビルの高いフロアとかちょっと苦手だから、このくらいの中層ビルがちょうどいい」



