「このホテルは色々な意味で有名なんだ。
人気も高くて、中々、予約も取れないらしい」
翔はラウンジを隈なく見て回りながらそう呟いた。監視カメラの位置やソファやテーブル、大きな造花の花瓶の下までもチェックする。
「ま、沙羅のお父さんのホテルだから、安全なのは間違いない。
だから、ゆっくり羽が伸ばせるよ」
そんな話をしていると、ホテルの支配人が翔と沙羅の担当スタッフとして挨拶をし始める。翔はその支配人の顔と名札を照らし合わせた。そして、翔の頭脳にあるデータがOKを出す。
「では、お部屋にご案内します」
翔は沙羅の腰に手を当て、背後にしっかりと寄り添った。この支配人は沙羅の素性と翔の役割を心得ている。他のスタッフに関しては、沙羅がこのホテルの令嬢だとは知らされていない。ただの超VIPということだけ。
特別仕様のエレベーターは直通で最上階まで上がっていく。



