車は高速道路に入り、ビル群の中を爽快に走り始めた。
沙羅はボディガードのようでボディガードじゃない不思議な翔という存在を、もう一度垣間見る。
中性的で柔らかい翔の笑顔を何度も見たいと思ってしまう、そんな自分にほとほと困っている。
でも、翔の言う通り一週間だけの疑似恋愛を楽しむという事は悪い事ではないのかも。そう思ったら、何となく楽になった。後は、自分の翔へ想いの調整だけ。好きになる事は絶対に避ける。でも、そう言い聞かせている時点で、どうかと思うけれど。
そして、車は沙羅が宿泊するホテルへ到着した。
「オリエンタルハイベイサイド東京」 もちろん、沙羅の父の所有するホテルだ。
でも、沙羅自身、お父さんの仕事に関しては全く興味がないみたいで、どこにどんなホテルやリゾート施設があるかなんて把握していない。だから、このホテルも今回の件で初めて知ったみたいだった。
翔は指定された駐車場へ車を停め、専用ラウンジへ沙羅を案内する。案内するといっても、その駐車場とラウンジは繋がっているようなものだけれど。



