一方で、唐澤の部屋では…
唐澤は翔がオフィスを出て行く音を聞いた後、データベースからあるデータを引っ張り出した。近々の依頼だ。本来なら細谷翔案件といってもいいほどの、裏事情のある女性の警護依頼だった。でも、もうその手のスペシャリストの翔はいない。
だからといって、今、残っているメンバーが二流というわけではなく、それぞれで得意分野が違うだけだ。
唐澤は三日ほど前から、ずっと、この案件について考えていた。その警護の重要性は熟知している。あとは、誰を付けるべきかだけだった。
すると、誰かがオフィスのドアを開ける。どうやら、彼が帰ってきたらしい。唐澤はその人物がもう誰かは分かっている。だって、唐澤自身がここへ呼んだのだから。
「あれ? 翔は?」
その人物は唐澤の部屋に入ってくるなり挨拶もせずにそう聞いてきた。
「もう帰った。しばらく休むからよろしくとの事だ」
唐澤のその言葉にその人物は寂しそうな顔をする。そう、そんな可愛らしく寂しがる人間はこのチームには一人しかいない。
「え~、会いたかったのに」



