「翔、よく聞いて。
パパはすごく機嫌が悪いかもしれないけど、そんなの無視して大丈夫だから。
とにかく、私に任せて。
翔は何もしなくていいし、何も言わなくていいから。
分かった? OK?」
沙羅は何だか気持ちが焦っている。そんな状態で果たしてうまくいくのか、沙羅自身でさえ分かっていない。
「俺は大丈夫。
沙羅こそ、久しぶりにパパに会うんだから楽しんでおいで」
沙羅は深くため息をついた。翔は沙羅のパパの本性をまるで分かっていない。
「翔… ううん、いや、うん、大丈夫…
とにかく、翔は何もしなくていいから」
沙羅は誰も見ていない事を確かめてから、翔に軽くキスをした。翔は笑っている。何だかその笑顔に沙羅は泣きたくなった。もうこれ以上、何も話す事はない。後は沙羅自身の問題だから。
沙羅は翔からスーツケースを受け取り、そして、大きく息を吐いた。翔に軽く手を振り、真っすぐに前を見て歩き出す。



