沙羅はほろ酔い気分でいい気持ちだった。
七海とユリアからたくさんの翔の楽しい話を聞いた。その話から二人の翔へのリスペクトを感じて、翔という人間がどれほど有能で会社のエースとして皆を引っ張っているという事がよく分かった。
人間性に置いては、究極の二重人格らしかった。それは沙羅に出会うまでの翔の話で、今は、多分、違うらしい。
整い過ぎた美しい顔と完璧なビジュアル、くしゃくしゃになる子供みたいな笑顔に天真爛漫な性格。それを武器として、ギャップという魅力でたくさんの人間の心を虜にしてきた。それでいて、強さと男らしさを持ち合わせている。七海もユリアもそんな翔を心から尊敬していた。沙羅もそのギャップに心を撃ち抜かれた。今でもそれは続いているけれど。
翔はお店を出ると、すぐに沙羅の腰に手を回す。そして、沙羅の顔を覗き込み、困ったように笑って見せた。
「ごめんね」
「え、何が?」



