「翔…
この辺りに熊っているの?」
「熊??」
沙羅の唐突な話のすり替えに翔はついていけない。訳が分からないといったように目をパチパチさせている。
「熊はいるとは思うよ。ここはかなり深い森の奥だから。
っていうか、今は熊の話は関係ないよ」
沙羅は可笑しくなってクスッと笑ってしまう。翔にとってパパの存在は熊よりも怖い存在だ。沙羅は笑顔のまま翔の腰にしがみついた。とにかく、さっきの話を忘れてほしかった。
「翔、何も心配しなくて大丈夫だから…
もし、熊が現れたら私は何もできないけど、もし、パパが現れたら私は簡単に倒す事ができる。
だから、もし、熊や猿が現れたら、その時は、翔、お願いね。
パパが現れたら、私が一人で闘うから」
翔は気難しい顔をして考えている。でも、すぐに大きな声で笑った。沙羅のたとえ話がちゃんと通じてくれていればいいけれど。
翔はそんな沙羅に優しくキスをする。



