「お疲れ様…
その女性に気付いた沙羅は、本当にいい子なんだね」
「え、いや… いい子だなんて」
翔は、照れ臭そうにはにかむ沙羅に優しい眼差しを向ける。そんな翔の視線に沙羅の心は再びときめいてしまう。
沙羅は自分の惚れっぽさにいい加減嫌になった。いやいや、惚れっぽいなんて今までそんな事はなかったのに。
沙羅は自分の中にぶ厚いシールドを張った。ボディガードに心をときめかすなんてあり得ない。そんな恋愛ごっこをしてる暇なんてない。
沙羅は、今回の旅の目的を頭の中でもう一度思い描く。龍也と再会するためにここへ来た。それが一番の目的だということを。
「一つ聞いていい?」
「え? あ、はい」
「その助けてあげた女性と、それかその人のご主人と連絡先とか交わしてないよね?」
沙羅は抜けかけた記憶を呼び戻す。
「してない…」
「名前とかも教えてない?」
「…はい」
翔はスーツケースを一回転させて、名前に関する何かが付いていないか確認する。
「だったらOK」
そう言って、涼し気な顔で駐車場の料金をカードで払うと、沙羅を手招きする。
「これから一週間、沙羅を守る事が俺の仕事だから。よろしくね。
じゃ、ホテルへ向かおうか」



