沙羅は体の芯まで熱くなる。翔の全てを沙羅の全てが求めている。沙羅は翔の左手にそっとキスをした。翔の温もりをいつも感じていたい。
「翔… 愛してる…
私もこんな気持ち、初めて…
翔と離れたくない…」
沙羅はまた涙が溢れ出す。
たぶん、昨日の龍也との出来事とか、今の沙羅にはあまり関係がなかった。この情緒不安定さは、明日になれば翔と離れてしまう現実に心が追い付かないから。そういう風にならないために必死に翔と離れない理由を考えるけれど、時間が短すぎて上手く頭が回らなかった。
翔は一本道に面した細長い小道へ車を走らせると、森の中に不思議な空間が現れた。翔はその場所へ車を停める。
「ちょっと休憩しよう」
「ここはゴールじゃないの?」
沙羅はそう聞いてしまうくらい、この神秘的な森の風景に魅了されていた。楕円形にその場所だけ芝生のような植物が生えていて、憩いの広場のような雰囲気がある。そして、その周りを大きな木が囲んでいた。上を見上げると、大きな木々から伸びる枝や葉っぱがその空間に緑の天井を作っている。その隙間から零れ落ちる陽の光が、突然やって来たよそ者を歓迎してくれているような、そんな不思議な気持ちにさせてくれた。



