翔は隣で怒っている沙羅を横目で見つめる。
「翔って、女の子の気持ちを全然分かってない。その子は翔の気持ちを自分に向かせたくて、一生懸命アプローチしてるのに、翔の言葉に、全然、愛を感じない」
翔は困ったように微笑んで沙羅の方へ顔を向ける。
「だって、愛してないからしょうがないじゃん。
その事はちゃんと伝えてある。それでも会いたいって言ってくるからそうなるだけ」
沙羅は寂しそうに俯いた。情緒不安定にも程がある。二人の未来が見えない今の状態では、沙羅の気持ちに少しの余裕も生まれない。
翔はそんな沙羅の事に気付いていた。寂しそうにしている沙羅の頬を左手で優しく触れる。
「だから、沙羅はすごいって言ってるじゃん。
全く恋愛体質じゃなかった俺を、こんな風に変えたんだから」
「面倒くさいとか、ない?」
沙羅は翔の左手をそっと握った。
「面倒くさいどころか、もっと、もっと、沙羅の喜ぶ事をしてあげたい。
沙羅の笑顔が見れるのなら、俺は何でもする…
俺にとって、沙羅の存在は、命と引き換えてもいいくらい尊くて守りたいものだから」



