美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 沙羅はもう涙ぐんでいる。
 龍也の事も、お父さんがやって来る事も、ましてや、翔と明日には別れてしまう事も、沙羅には辛い事が多過ぎた。

「この間、皆で海に行ったから、今日は森の方に行ってみたい。
 マイナスイオンたっぷりの美味しい空気を吸ったら、気分が変わるかもしれないから」

 沙羅の顔が穏やかになる。
 翔はOKと微笑んで、もう一度沙羅にキスをした。たぶん、きっと、翔の方がメンタル面で危険水域に達している。
 沙羅が居なくなったら…
 翔は現実に向き合う事を避けていた。このキスができなくなるなんて、そう思うだけでゾッとするから。