「パパは…
私の事になると、すごく気難しくなる。シンプルにいこうなんて絶対に無理。
特に、昨日の事件があった後だから、すぐにでもアメリカへ帰したいと思ってる」
「そんな怖がらせないでよ…」
翔はマジで泣きそうになった。仕事を離れたプライベートな案件に対しては、完璧な攻略法なんてない。愛する彼女の父親というだけで相当なプレッシャーなのに、その人物が最高級のA&Wの顧客であって、唐澤の怒った顔がまだ何もしていない翔の脳に浮かび上がってくる。
沙羅は困ったように頬を膨らませて、翔にキスをする。
「どうしようか…」
キスをしながらそんな事を言う沙羅は、多分、あまり本気で考えていない。きっと、そんな沙羅の事だから、お父さんに全てがばれてボディガードとそんな関係なんて絶対に認めん!と怒らせてしまうのがオチだ。
そして、単純な性格の沙羅は、もう翔のキスに夢中になっている。翔のくちびるから離れようとしない。多分、完全にお父さんの問題なんて忘れてるはずだ。



