「で、パパは?」
「理由は?って」
翔は少しだけゾッとした。そんな時の沙羅は、きっと、噓がつけない。正直者の沙羅は、翔との関係を包み隠さずパパに話したに違いない。
…それなら、それで別にいい。
と思いながら、翔の頭の中はあらゆる攻略法の道筋を組み立て始める。
「理由は、ただ、まだ日本にいたいってそれだけ伝えた。
それ以上の事は伝えてないよ。
私は、まだ翔と離れたくないだけなの…
一分でも一秒でも一緒にいたい…
翔の任務が終わったら、私は警護される人間じゃなくなる。
そういうフラットな関係で一緒に過ごしたいの…」
翔はそんな沙羅を優しく抱きしめた。パパに本当の理由を話してなかった事が一つの救いだった。
オーナーが日本に滞在するほんの数時間を乗り切ればいい事だ。ただのボディガードとクライアントの関係として。
「じゃ、とりあえず、沙羅のお父さんと過ごす数時間をどう乗り切るか、対策を練らなきゃ。
沙羅があと数日、日本に居れるようにね」
沙羅は顔を上げて翔の瞳をジッと見つめ、そして、困ったように微笑んだ。



