「起きた? まだ寝ててよかったのに…」
翔はそう言いながら、沙羅のために冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。ふさぎ込んで見える沙羅にどうぞと渡す。
「翔… パパが来るって… 最悪…」
どうやら沙羅の方にも連絡がきたらしい。翔は肩をすくめて笑って見せる。
「らしいね」
沙羅は翔の顔をまともに見ようとしない。翔が渡したミネラルウォーターも飲もうともせずにひたすらため息をついている。
「どうかしたの?」
翔は沙羅の顔を覗き込んだ。あまりに不自然に目をそらす仕草は、違った意味で可愛くてたまらない。沙羅は半分泣きそうな顔で翔の首元に抱きついてきた。
「私が余計な事を言ったからなの…」
「余計な事?」
沙羅は翔の首元から離れソファに倒れ込む。そして、体を起こして天井に向かってもう一度大きくため息をついた。
「私があと二、三日、日本にいたいってメッセージで送った。
今回のエアのチケットはパパが家族名義で取ったもので、変更するにもパパに言わなきゃ話が進まなくて…」



