美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 日本人でこんなフレンドリーな人を知らない。初めて会って、いきなり沙羅って呼ぶなんて。でも、あのクシャとした可愛らしい笑顔は、沙羅の心の中に溶け込んでいく。

「あの、すみません、私の自己紹介はまだ……」

 すると、翔は肩をすくめながら振り返った。その表情はまた笑っている。

「悪いけど、君の事は全部把握してるから。
 ま、それが、僕の仕事なんだ、ごめんね」

 少年のような幼い笑顔に沙羅は少しだけときめいた。でも、だからといって心を許すなんてまだ早い。子供の頃から今まで、ボディガードのような存在は沙羅の身近にいつもいた。家族で行動する時や治安の悪い外国へ行った時など、いかつい真っ黒のスーツを着た見た目だけで威圧感を与える男性がまるで影のように沙羅達を見張っていた。
 そんな人達と話をした事はほとんどない。というか、そういう人達には話す隙さえ見つからない。
 でも、今日、細谷翔という人間を見て、沙羅のボディガードへの固定観念が一瞬で崩れてしまった。