美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 母は優しい人だった。成長して抱きしめられる事はなくなったけれど、母の胸の中の温もりを今でも求めているのかもしれない。それほど、沙羅の存在は翔が忘れてしまっていたたくさんの大切なものを思い出さてくれる。

「翔…
 本当に、ありがとう…」

 沙羅はもう一度、力強く翔の事を抱きしめて、そして、翔から離れていく。沙羅はティーセットをテーブルに並べ始める。何だか鼻をすすりながら。

「沙羅…?
 また泣いてる?」

 沙羅は泣きながら笑っている。翔はそんな沙羅を胸の中へ引き寄せた。

「無理しなくていいから…」

「無理しなきゃ、自分が壊れそう…
もちろん、龍也君の事で精神が参ってるのかもしれないけど… でも…」

 沙羅は肩を震わせながら泣いている。溢れ出る涙のせいで次の言葉が出てこない。
 翔は沙羅を抱きしめたまま、困ったように微笑んだ。何がそんなに悲しいのか分からなかった。