美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 でも、こうやって、翔の中の完璧な理性をほんの数秒でぶち壊し、今までずっと隠れていた感情的な部分を数秒で引き出してしまう沙羅の強力なパワーに戸惑っている。
 翔はホテルの部屋に入った後の自分の行動に責任が持てない。沙羅を欲する感情は、荒れ狂う獣のように翔のマインドを破壊して手が付けられなくなるに違いない。
 エレベーターを出た二人は手を繋いで部屋へと向かった。
 翔は気持ちを落ち着かせるために何度も息を吸って吐く。あの事件の後で、感情が高ぶっているのは沙羅だけじゃない。沙羅は大切なクライアントだぞとわずかな理性が翔にブレーキをかけるせいで、他のあらゆる感情が異常なほどに騒ぎ出す。いつものクールな翔はここにはいない。
 沙羅は部屋のカードキーをかざして、ロックを解除した。そして、吸い込まれるようにドアの向こうへ消えて行く。翔は中には入らず、ドアの前で躊躇していた。入ったら何かが変わってしまう。それを怖がる自分と歓迎する自分とのせめぎ合いだった。

「翔?」

 ドアの向こうで沙羅の声がする。翔は、もう、何も考えたくなかった。