美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 すると、沙羅の少し後ろを三十代後半くらいの女性が歩いている。かなり具合が悪そうな顔をしていて、沙羅は何度もその女性に声をかけていた。
 出口から出た沙羅はその女性の家族を探した。すると、沙羅とその女性に歩み寄ってくる男性がいる。きっと、女性の家族に違いない。その男性は何度も沙羅に頭を下げ、具合の悪そうな女性の肩を抱いて離れていった。
 沙羅だって、見た感じそんなにたくましいわけではない。翔の目にはか弱そうな女性に見える。でも、あのか細い腕で大きなバッグを持ち、片手でスーツケースを引いていたその姿は、翔に強烈な印象を残した。
 いわゆるギャップという感情だった。彼女は優しい心の持ち主に違いない。