「でも、わざわざ俺に会いにアメリカから来た。
俺に会うのをすごく楽しみにしてたよね?」
「それは友達としてで…
それに今回の旅行は、大学の時の親友に会う目的もあって、別に龍也君に会う事が全てじゃない。
か、彼だって、日本にいるし、その人にも会いたかったから…」
翔はその会話で龍也の表情が変わるのを察した。今はモニターで二人の様子は観れないけれど、会話の間の沈黙に、沙羅の恐怖を感じ取れる。
すると、店員がドアをノックして扉を開けた。翔は後ろから手を伸ばし、そのドアを完全に開け広げる。そして、さりげなく内側から鍵をかけられないように、ドアの側面にある鍵穴に噛んでいたチューインガムを突っ込んだ。このガムだって、店員にもらったものだ。ガーリックの効いた料理が多いからと言って、店員がテーブルの上にチューインガムを何枚か置いていた。翔は何かのために七海の分まで噛みながら待機していた。
「沙羅、もう時間だよ」
翔は最高の笑顔で沙羅を迎えに来た。龍也以上のいい男ぶりを見せつけて。
前を歩いていた店員も驚いている。後ろに人がいたなんて思ってもいなかったみたいで、目が丸くなっていた。



