沙羅の顔から血の気が引く。大好きだった幼なじみのお母さんを私が殺してしまったと思っているに違いない。
「沙羅… 龍也の話は作り話だから信じるな。
沙羅を困らせて何かをしようと企んでるんだ」
翔の言葉は沙羅に届いているのかさえ分からない。沙羅の表情は無に等しかった。
「母さんは自殺だった…
遺書も残されてた。そこには壮絶ないじめにあった事が書かれてた」
龍也は声を殺しながら泣いている。その姿に嘘はなかった。
「父さんは、その後、家に帰ってくることはなかった。親戚もいない身寄りのない俺は児童養護施設に行くしかなかった。
結局、そこに十八歳になるまでお世話になったけどね」
沙羅はかなり呼吸が乱れている。翔は我慢ができず沙羅を迎えに行こうとすると、七海が翔の手を掴んだ。
「翔、もう少し待って。
実は、今日、警察にも連絡を入れてるんだ。近くで待機してる。
龍也が何かしでかしたら、すぐに飛んでくるようになってる。
翔、もう少し辛抱してほしい。
龍也が捕まった方が沙羅ちゃんの今後のためにもなるだろ?」



