美魔男の完璧な仕事に心が溺れる



 翔は指定された到着出口の待合ロビーでコーヒーを飲んでいる。もうそろそろ出口から出てきてもよさそうな時間帯だ。
 翔はこの数日で沙羅に関する全ての情報を脳にインプットした。沙羅の父親が色々な面で有名になり過ぎたため、彼女をターゲットにしている連中はパパラッチだけではない。
 翔はスマホに保存している沙羅のSNSに投稿された写真をもう一度確認した。

「こんなのばらまいてるくらいだから、ただのお馬鹿なお嬢様だろ…」

 翔はボディガードの代名詞となっている黒のスーツを好んで着ることはない。でも、初日だけは正装で行く事を唐澤にしつこく言われていた。だから、とりあえず濃い色のグレーのスーツを着ている。ネクタイは緩め、それでも翔の完璧なビジュアルのせいでメンズ雑誌に載っているモデルよりもはるかにレベルが高かった。
 そして、このロビーにいる全ての人間の状況も把握している。平日のためほとんどがお迎えのために来ている乗客の家族か知人。怪しげな人間がいる気配は、今のところない。