沙羅はそんな父と兄の気持ちも痛いほど分かった。何が起こってもおかしくないそんな世の中だし、卒業式の写真をSNSに載せてしまったのは沙羅の不手際だったから、父や兄に反論する気持ちにはなれない。だから、ボディガードの件は素直に受け入れた。そうすれば、日本へ行く事はできる。
「でも、このビジュアルがあまり好きになれない…」
兄からスマホに送られてきたそのボディガードの宣材写真を見ながら、沙羅はため息をついた。
明らかに盛り過ぎている。沙羅の周りいるハイレベルなイケメンよりもイケメンだった。沙羅の偏った認識の範囲では、日本人でこんなに整った顔の人はいない。でも、宣材写真なのだからそれは仕方のないこと。少しでもよく見せてクライアントを増やしたいわけだから。
沙羅はもう一度その写真を見る。
少し長めの髪はきっと色を入れてはいない。つややかな黒髪に整った美し過ぎる顔。笑っているような笑っていないようなそんな透き通った瞳。この男性のこれが本物の写真だとはやっぱり思えない。あまりにも違い過ぎる残念な本当の姿を見るのが何だか辛かった。
「笑わないように努力しなくちゃ…」
沙羅はそんな意地悪な事を考えて、もう一度目を閉じる。あと、一時間ほどで到着する。それまでしっかり寝ておきたい。久しぶりの日本を満喫するために。



