「ま、確かに沙羅の子供の頃ってめちゃくちゃ可愛かったんだろうね。龍也からしたら天使に見えたのかもしれない」
「それは大げさだよ…」
翔はそんな風に微笑む沙羅の肩に手を置き、そして、狼のような鋭い目つきで沙羅を見つめた。
「大げさじゃないよ。龍也はそういう環境で生まれ育った。沙羅が生まれ育ってきた環境とは真逆の世界で」
「真逆の世界?」
沙羅は何だか怖くなって翔の瞳を真っすぐに見た。翔の言葉の意味が見出せない。
「沙羅が白の世界で育ったなら、龍也は黒の世界で育ったって感じ。
闇が蔓延る世界、龍也の両親はそんな世界の人間だった」
沙羅は翔の話す内容がまだはっきりとは分からない。でも、昔の記憶を辿れば、一度だけ龍也のお父さんを見かけた事があった。ちょっと怖かった、いや、かなり怖かった。そんな雰囲気を持ったお父さんだった。



